2019.06.20
寄稿「クリスチャン・ツィメルマンピアノリサイタル」
クリスチャン・ツィメルマンピアノリサイタル 2019年3月14日 コンサートホール
2019年3月14日、今、世界で最も高い評価を受けているポーランド出身のピアニスト、クリスチャン・ツィメルマンのピアノリサイタルが、熊本県立劇場コンサートホールで開催されました。演奏は、ショパンの4つのマズルカから始まり、ブラームスのピアノソナタ、再度ショパンの4つのスケルツォと進み、アンコールで弾かれたブラームスの2曲のバラードまで見事な統一感を持ち、考え抜かれたプログラムでした。19世紀ロマン派の絢爛たる楽曲が、21世紀の現代、ここ熊本の地で、今を生きる人々のために、最高のピアニストによって演奏されました。150年以上前に作曲された楽曲は、全く自然に現代の人々と結びつき、現代、そして未来の音楽を予兆させる響きを感じさせるものとなりました。満席のホールの中は、最初から最後まで、観客が生み出す緊張感で満ちていました。そして、その緊張感、高揚感、歓喜を共有した一体感は演奏が終わっても続き、劇場を出た観客の皆さんが家路につく最終の臨時バスの中ですら目に見えるようでした。
熊本市現代美術館館長
桜井 武【さくらいたけし】
熊本市現代美術館の桜井武館長は2019年6月4日に逝去されました。ご専門の美術のみならず音楽や演劇、舞踊などへの造詣が深く、県立劇場でも文化事業評価委員としてさまざまなアドバイスをいただいておりました。 謹んでお悔やみ申し上げます。