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2021.09.20

特集「ホールの部分利用~限られたスペースの中でエンターテインメントの未来を描こう」

ホールの部分利用が、劇場の可能性を広げる

観客を入れた公演の自粛や、縮小といった措置が余儀なくされるこのコロナ禍において、演奏や演劇の専門ホールを有する劇場としてできることはないだろうか。

これまで県立劇場では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、公演や練習、発表などの機会が制限されてきたアーティストの活動を、YouTubeでの配信等でバックアップしてきました。アーティスト自身も、オンラインを利用した活動を行うなど、演奏や演劇の可能性を模索。そこから新たな演奏や演劇の形も生まれるなど、エンターテインメントのあり方が進化していく面もありました。ただ舞台と観客の、熱を交換するような一体感や、場に漂う化学反応はライブだからこそ得られる特別なもの。コロナ禍においてもホールで演奏し、演じる機会をより多くつくり出すため、設置者である県と協議を重ね、熊本県立劇場条例の一部改正により、ホールの部分利用を可能とする新しい施設の使用区分を設けました。これにより、通常の公演、規模を縮小した公演、無観客でのオンライン配信、練習での使用など、様々な形態によって使用区分の選択が可能に。

新たに設けた使用区分は3種類。ひとつ目は、ステージと1階客席、ホワイエの使用。2階、3階客席を使用せずに1階客席のみに観客を入れた形での公演が可能です。ふたつ目は、ステージのみの使用。ステージ練習や特設ステージ(舞台上にステージと客席を設けた小劇場形式の舞台)などの使用ができます。そして最後は、ホワイエのみの使用。サロンコンサート、レセプション、展示会などにも。いずれも観客を入れた公演や、無観客でのオンライン配信にも活用できます。今回の特集では、実際にホールの部分利用を活用した2つの団体をご紹介します。使用できるスペースが限られている分、アイデア次第ではホールの新たな使い方につながる可能性も秘めています。ここから、エンターテインメントの新たなムーブメントが生まれることがあるのではないかと期待しています。 


(ステージのみを使用した演劇公演のイメージ。)
撮影協力:CONTE&ACT噐(うつわ)、熊大演劇部

 

熊本交響楽団ホワイエコンサート 
(使用区分:ホワイエのみの使用)

7月22日、梅雨明けからしばらく経ったその日、県立劇場の外には夏の訪れを歓迎する蝉の鳴き声が響き渡っていました。この日、コンサートホールのホワイエで開催されたのは、熊本交響楽団のコンサート。後援会向けのコンサートで、座席間隔を1メートルずつあけ、感染予防対策を講じた上で、ホワイエのみの使用で開催されました。この日のコンサートのために結成された8ユニットが、ホワイエの窓際のフロアをステージに見立て、途中休憩をはさんだ約2時間の演奏を行いました。今回の部分利用を活用したコンサートを企画した熊本交響楽団の梅田雄介さんは、 「ホワイエでの演奏は、ホールと比べて少し音がこもる感じでしたが、 お客様との距離が近く、窓の外から蝉の声が聞こえ、季節感もいっしょに演奏を楽しめる、ホールとは一味違うコンサートになりました」。 同楽団は、11月には定期演奏会を予定しており、その合同練習会をコンサートホールのステージのみを借りて行う予定。「コロナの影響で、大勢が集まって練習できる会場を探すのも一苦労です。舞台だけでも使用できる新しい取り組みは、大変ありがたい」と語ってくれました。 


(ホワイエコンサートでは、窓の外に広がる緑も、舞台の効果的演出に。)


(感染症対策として、座席の間隔をあけて客席をセッティング。)

 

中・高合同合唱部練習会
(使用区分:ステージ+一階客席+ホワイエの使用)

8月7日・8日に開催された熊本県合唱コンクール。その前日に、コンサートホールのステージ、1階客席の使用区分で、高校2校、中学4校の6校の合唱部合同練習会が行われました。
この練習会の発起人である必由館高校の古川かおり先生は、以前からコンクールと同じ条件で合唱の練習を行いたいと考え、準備をしていたといいます。新型コロナウイルス感染症の影響で、教室での練習は制限がかかる状況にあり、発表の機会があったとしても、無観客ばかり。そんな中で県立劇場のホール部分利用がはじまったことを知った古川先生は、他校の合唱部に声をかけ合同練習会を行うことに。練習時間を区切り、決められた時間内は1校貸し切りの状態で練習できる環境をつくりました。「本番と同じホールで、 隣との距離を取って歌う感覚を、声の響きや残響を含めて確認できました。こういう場所で歌えるってとても幸せなことで、歌うことを肯定されている気分になれます。贅沢な空間で、大好きなことができる。憧れの県劇で、高校生がヒールをはいた気分を味わえました」。
必由館高校に割り当てられた3時間の練習の間、1階の客席には10名ほどの保護者の、子どもたちの生の合唱に聴き入る姿が見られました。


(マスク着用で行われた合唱の練習)


(コンサートホールの響きを確認しながら、練習は進められた。)

 

【ホールの部分利用の使用区分と使用料金】

◎コンサートホール
ステージ+1階客席+ホワイエの使用・・・基準料金の80%
ステージのみの使用・・・基準料金の60%
ホワイエのみの使用・・・基準料金の20%

◎演劇ホール
ステージ+地階客席+ホワイエの使用・・・基準料金の80%
ステージのみの使用・・・基準料金の60%
ホワイエのみの使用・・・基準料金の20%

※基準料金とは、施設使用料にある入場料区分、使用日区分ごとに設定されたホール全体の使用料金のことです。

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