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2019.09.20

まなびの風景「阿蘇市立波野中学校神楽クラブ」

30年前の24時間ぶっ通し、神楽全三十三座上演。

日本の神話「天の岩戸」の神事を主体に、建国の大意を広く伝えるために250年以上前の明和の時代にはじまったとされる神楽。宮中で奉納される厳かな御神楽(みかぐら)と日本各地の地域に伝わる里神楽とあり、熊本県内でも各地域に伝承芸能として伝わっていました。

時代を経て数少なくなった中でも、小さな地区ながら保存会、小学校、中学校と、次世代へ神楽の伝承に力を入れているのが、阿蘇市波野の中江岩戸神楽です。この中江の岩戸神楽と熊本県立劇場との関わりは深く、今から30年前、神楽全三十三座(いわゆる33シーン)をわずか十数人の保存会メンバーで24時間ぶっ通しで上演を果たしたことに遡ります。三十三座の中でもほとんど上演されていなかった座もあり、当時の古老のかすかな記憶をもとに、一年間の準備期間で三十三座、見事復活を遂げました。この上演をきっかけに、中江地区での神楽保存への気運が高まり、子ども神楽がはじまり、若い世代への伝承に力を入れるようになったといいます。

中学校の部活動として神楽を伝承。

阿蘇市立波野中学校にある「神楽クラブ」は、中江の岩戸神楽を伝承する部活動。全校生徒29人のうち13人が所属し、その全員が「おもしろくて続けている」というほど、地元の伝承芸能への関心の深さがうかがえます。

神楽クラブの部長を務めるのが、3年生の岩下真大(まひろ)くん。小学2年生の頃から子ども神楽に入り、現在では部活動の傍ら神楽保存会の活動にも参加しています。神楽に興味を持ったきっかけを聞くと、「小さい頃、赤い顔のお面がものすごく怖かった。だけど、その恐怖が迫力のある舞だと自分の中で印象が変わっていったから」と答えてくれました。幼少時に追いかけられて泣かされた赤いお面を、今では自分で被って舞う側に。「お面の視界の狭いところから観客の反応を見るのがおもしろい。自分たちがこの神楽をつないでいかないといけないと思います」と語る岩下くんに、岩戸神楽が次世代につながる光が見えました。


(9月7日、阿蘇市で開催された第41回「少年の主張」の会場で波野中学校の神楽が披露された)


(岩下真大くんと担当の山本先生)

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