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2023.03.15

まなびの風景「野原八幡宮風流(のばらはちまんぐうふうりゅう)」

770年以上
口伝で継承される
民俗芸能

熊本県荒尾市の菰屋(こもや)、野原(のばら)、川登(かわのぼり)の3つの地区に伝わる野原八幡宮風流。起源は鎌倉時代の悪魔祓いといわれ、現代まで770年以上もの間、口伝口授で継承されてきた民族芸能です。

毎年10月15日、野原八幡宮大祭(通称、のばらさん)で、獅子頭に見立てた笠を着け、太鼓と舞いを披露する2人の男児の「打手(うちて)」と、地区の成人男性による「篠笛」と「唄」で構成された太鼓踊りが披露されます。その舞いは、華やかさと優雅さ、そして笛と唄、太鼓、舞いとの協調が、見る人の心をつかみます。3つの地区の舞いや唄、衣裳などは、それぞれ口伝による継承のため、少しずつ違いがあり、のばらさんの本番では、菰屋、野原、川登の順番で、3つの地区の風流が奉納されます。

2015年には、国指定の無形民俗文化財に選出され、さらに2022年11月、この野原八幡宮風流を含め、全国41件の国の重要無形民俗文化財からなる「風流踊り(ふりゅうおどり)」が、ユネスコ無形文化遺産として登録が決定しました。

緩急のある動きが、とても優雅な野原八幡宮風流。全国41件の風流踊で、ユネスコ無形文化遺産として登録が決定

民俗芸能が中心の
地域の連携と
コミュニティ

野原八幡宮風流の特色は、それぞれの地区から小学1、2年生の男児2人が打手として選ばれ、6年間、毎年のばらさんで舞いを奉納する役割を担うことです。最初は小さく、太鼓の打ち方、舞いもよく覚えられなかった子が、一年ごとに舞いに優雅さが身につき、太鼓も力強くなり、成長する姿が見られるといいます。

「昔からの決まりで、6年間打手を経験した子が、その次に選ばれた打手を指導する「師匠」となります。それが脈々と受け継がれ、地域にとって無くてはならない存在となっています」と語る野原地区の代表である西田耕陽さん。打手の衣裳である笠は毎年新調され、その頭に直接ふれる部分は、打手の親が3週間もの時間をかけ、藁をたたいてやわらかくしたものが使われています。地域の小学校では、社会科の授業で野原八幡宮風流のことを勉強し、最後にはボランティアガイドを務めるようになります。地域、家庭、教育がうまく連携した取り組みが、民俗芸能を後世につなぐために一丸となるコミュニティをつくりだしています。

地域の中心にある野原八幡宮
小学2年生の時に打手に選ばれた濱﨑琥晴くん(右)と三上大心くん(左)。「風流のことを知らずに入って、5年間でどんどん上達して、大変でしたがやってよかった」(琥晴くん)「自分が打手の間に世界遺産にもなって、うれしかった。次は師匠として教える役割です」(大心くん)

 

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