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2025.06.20

【館長室から】No.1

我が家にはラグドールとキジトラ猫の猫2匹、そしてジャ—マン•シェパードが同居している。
ホワイトのセミロングヘア—が印象的なラグドールは、顔がポインテッドの薄茶色で、とてもキュ—トで、愛らしく、それでいてどこか神々しいところがあり、聖書のルカの福音に因んで「ルーク」と名づけた。キジトラ猫の「チョコラ」は、その名の通り、可愛らしく、人懐っこい猫だ。飼育放棄で捨てられたチョコラは、発見された時、寒さで震えていたそうだ。
2人、いや2匹が相思相愛になってくれればという願いも虚しく、もう8年近くになるのに、2匹の間には「冷戦」状態が続き、時折り、激しい取っ組み合いを演じながら、それぞれの領分を守った「冷たい平和」が続いている。
それでも、「犬猿の仲」のルークとチョコラだが、思ってもみないことで、意気投合することがあるようだ。たまさか、NHKの「岩合光昭の世界ネコ歩き」の番組で、インスタンブ—ルの路地に我が物顔で屯するネコたちが、画面に大きく映し出されるや、それを見たルークとチョコラがフリ—ズしたようにじっと突っ立ったまま、お互いの顔を寄せ合って見入っていることがあったのだ。まるでお互いの顔を合わせて、何事かそれぞれの感動を交換し合っているようにも見えた。
そう思ったのも、日本の動物学の大家の日高敏隆先生の奥様から頼まれて、エッセイのようなものを書いたからだ。日高先生の訳になる、動物行動学の泰斗、ヤ—コブ•フォン•ユクスキュルの『生物から見た世界』についてどこかでエッセイのようなものを書いたのを奥様がご存知で、日高先生の遺稿集のようなものへの寄稿を依頼されたのである。ユクスキュルの言う「環世界」という考えは、私の動物に対する蒙を啓いてくれた。
それぞれの動物たちが構築する世界を「環世界」と呼ぶなら、動物たちはそれぞれ独自に自分たちの感覚器官や行動様式に従って世界のある部分を彼らなりに意味のある世界として切り取っていることになる。私が猫に感じたものは決して荒唐無稽なことではないのかもしれない。いや、犬や猫にも音楽や絵画が何らかのインパクトを与えるのでは••••。そんな思いが膨らんでくる。

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