2025.06.20
【個性光る県内の公共ホールをご案内】清和文楽館(山都町)

清和文楽館(山都町)

江戸時代の後期、嘉永年間に淡路の人形芝居一座から技術を習ったことがはじまりとされる人形浄瑠璃、清和文楽。農民によって口伝で受け継がれてきたこの伝統芸能は、農村のお宮の舞台で奉納芝居を上演したり、各地の行事に招かれるなどで、地域で愛されてきたものです。一時期衰退の危機があったものの、昭和天皇即位を祝う大典での上演をきっかけに保存会が結成。さらに1979年に重要無形文化財に指定されたことから、口伝で受け継がれてきた浄瑠璃の文化を後世に残すために、民俗資料館建設が検討されるようになりました。紆余曲折を経て、現地での上演を可能にする劇場機能を備えた清和文楽館が、1992年に開館しました。この建物は、熊本県のアートポリス事業の一環として、著名な建築家・石井和紘氏が設計した大型木造建築で、木の温もりと文化の重厚さを感じられる空間になっています。開館当初は太夫、三味線が地元にいなかったため、熊本県立劇場の鈴木健二館長(当時)が著作権を処理した浄瑠璃のテープを寄贈。このテープで2年間、人形浄瑠璃の上演を行っていました。

現在では、淡路島で修行を積んだ専属の太夫と三味線が2名、人形遣いが1名在籍し、保存会とともに年間約180公演を行っています。地元の小中学校での総合学習で人形浄瑠璃を取り入れるなど、育成活動も活発に行われ、この取り組みを通じて清和文楽に興味をもった少年が、今では職員として在籍しています。県立劇場とタッグを組んだオリジナル作品づくりにも力を入れ、近年では漫画『ONE PIECE』の人形浄瑠璃作品が話題を呼んでいます。海外公演でも大きな評価を得たオリジナル作品は、清和文楽館で定期上映されており、新たなファン層獲得にもつながっています。
清和文楽館
熊本県上益城郡山都町大平152
電話:0967-82-3001
清和文楽館公式サイト | 熊本県重要無形文化財指定・くまもとアートポリス参加プロジェクト