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2020.12.20

県劇スタッフリレーコラム№8

新米の季節

毎年秋が来ると、家族が何かとバタバタし始める。「稲刈り」が始まるからだ。結婚したタイミングで実家から市内中心部に移り住んだのだが、故郷は田んぼしかないドがつくほどの田舎。私は、代々続く米農家の次男である。震災で大きな被害を受けたことを機に兄が実家に戻り、新しく二世帯住宅を建てた。とはいえ、築100年以上の家。取り壊すのも父と兄の長男コンビが悩み抜いた結果だ。当然ながら、新しい家には私の部屋もなければ居場所もないわけで、実家に帰る回数も減っている。しかし、種まき、田植え、稲刈りの時だけは違う。原田家にとっては正月や盆のようなもので、当たり前のように招集がかかるのだ。

今年の稲刈りもキャプテンは御年72歳の父。昔から口数が少なく、性格は真面目でマイペース。作業も堅実だ。一方で要領がいい母は、とにかく早く終わらせたいためか、基本イライラしている。母の機嫌をとるのも私の役目だ。広告代理店に勤める忙しい兄は、原田家長男の重責を負いつつも、作業の傍らSNS用の写真や動画を撮影するなどクリエイティブに立ち回る。これに私を加えたのが我々のいつもの布陣なのだが、基本的に父以外の3人はサポートに回る。母は父からの指示を伝えながら、ご飯や飲み物の準備、兄と私はもっぱら力仕事だ。兄と私も機械を操ることもあるのだが、なかなかうまくいかない。特に田植えなんかは、どれだけトライしても、悔しいくらい父のようにはまっすぐに植わらないのだ。

〝匠〟。兄と私はそう父のことを呼ぶ。

慣れや技術だけじゃない何かがそこにあって、おそらくその一つは作ることに対しての「想い」だと思う。いつもこの時期、父の背中に勉強させられ、自分の仕事や日々の生活を振り返る。「努力」はしているか?「感謝」はしているか?そこに「想い」はあるか?新米の季節、私はそんなことを考えながら、とれたての美味いメシを掻き込んでいる。

総務グループ兼事業グループ 原田 健太[はらだ けんた]

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