私が生まれ育った島には、劇場がありませんでした。小学生の時、初めて都会の映画館に行った時のこと。大きなブザーの音と同時に客席が暗くなって、「え！故障？」と不安になりましたが、周りの人は何も反応しないので、「ああ、これは始まりの合図なのだな」となんとなく気づいたのです。
「しらない」「はじめて」って、一歩踏み出すのも、とても勇気がいることだったりします。でも、どんなことでも体験してみると、だんだんと楽しくなったり、得意になってきたりしますよね。その積み重ねが、人生を豊かにしてくれると私は思っています。
熊本県立劇場での、知的・発達障がい児（者）に向けての劇場体験プログラム「劇場って楽しい！！」では、劇場の仕組みをわかりやすく案内した後、リラックスして芸術鑑賞を楽しむことができます。毎年開催されるので、少しずつ「楽しい」を積み重ねて、劇場に慣れてきた来場者もいらっしゃると思います。案内役を務める私自身も、だんだんと劇場や演奏される音楽に詳しくなってきましたよ！
「劇場って楽しい！！」には両手で大きくマルをつくるポーズがあって、プログラムの最後に出演者も観客もスタッフも、みんなでこのポーズをします。舞台上から客席を見ると、ものすごい笑顔でマルを作る子どもたちとご家族の方が見えます。その瞬間こそ、私にとって「劇場って楽しい！！」と感じる幸せな瞬間です。
また劇場でお会いしましょうね！

劇団 不思議少年
俳優　森岡　光