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2026.10.20

【館長室から】No.5

「帰還」という「成熟」

古代の叙事詩的な物語を、IMAXフィルム撮影を通じて壮大なスケールで蘇らせたクリストファー・ノーラン監督の映画『オデュッセイア』が世界的な話題をさらっている。
このホメロスの古典を最初に読んだとき、人物の描き方が定型的で、要するにトロヤ戦争の英雄のひとり、オデュッセイアという男が艱難辛苦の果てに最愛の母子の待つ故郷、イサカ(イタカ)に帰る「帰郷」の物語だと思っていた。
しかし、数十年ぶりに読み返し、恋しい故郷に「帰る」(ホームカミング)物語ではなく、過酷な試練や未知との遭遇を経て、精神の成熟や自分の存在を全うして元の場所にたどり着く物語であることに気が付いた。それは、「帰郷」(ホームカミング)ではなく、ギリシア語を由来とする「帰還」(ノストス)を指しているのだ。
日本のモダニズム建築を代表する我が熊本県立劇場は、10月から1年5カ月、修復のため「休館」となるが、県劇は、「旅する、県劇。」をスローガンに、アウトリーチなどを通じて地震の被災地などに積極的に関わっていく予定である。
そして1年5ケ月後、県劇はオデュッセイアのように、元の場所に「帰還」した時には、より成熟し、進化した県劇の姿になっているはずです。ご期待ください。

館長室から

 

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