2020.03.20
舞台さんのお仕事道具「雪かご」
季節は春。舞台では春にも雪が降ります。雪はいろんな表情を見せ、見るものの心を震わせます。ちらちらと降る細雪やボタン雪のような大きな雪、県劇の舞台にもこれまでいろんな雪が降りました。
舞台に雪を降らせる仕掛けはとても簡単な作りです。その歴史は古く、江戸時代から基本的な仕掛けは変わっていません。竹で編んだかごや布製の雪布に本雪と呼ばれる雪ネタを入れて吊物バトンに吊るします。括り付けた黒紐を引くと雪かごや雪布が回転し網状の部分から雪が落ちます。
雪ネタの形によって雪の表情が変わります。例えば、四角形の雪はゆっくり回転しながら落ち、大ぶりで見栄えが良く、綿雪やボタン雪を表現できます。三角形の雪は、細かく速く回転しながら落ち、ちらちら、はらはらと落ちていくため、はかない粉雪や細雪を表現できます。
紐の引き方次第でも雪の落ち方が変わります。素早く細かく引くと少しずつはらはらと雪が落ち、大きく力強く引くと多くの雪が一気に落ちます。芝居の演出によって使い分け、いつもは舞台に立たないスタッフも芝居心が問われ、一人の表現者となるのです。
本雪の色によっても、舞台の雰囲気が変わります。ピンクは花となり桜吹雪を、金糸銀糸は華やかな雰囲気を演出します。
雪かごの舞台効果は抜群ですが、片付けなどが大変で舞台スタッフ泣かせの仕事道具の一つでもあります。観客の感動をよそに、舞台裏では大量の紙吹雪の掃除が始まります。休憩や幕間の短時間に舞台スタッフ総出で片付けているのです。今日もまた舞台で雪が降ります。観客の感動の涙に交じり、舞台スタッフの目にも涙。今年もまた冬が終わり、春がやってきます。