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2026.03.20
【職員リレーコラム】No.28

ずっとそばにいてほしい存在
パンデミック禍において、舞台芸術はある意味「不要不急」とされたことは、記憶にあたらしい。ある時、こんな文章を目にした。『役に立たないものがごくあたりまえに存在をゆるされる世界は、なんと豊かなのだろう。』(寺地はるな「架空の犬と嘘をつく猫」より抜粋)不本意にも私の頭の中で、「役に立たないもの=舞台芸術」と置き換えられた。パンデミックによる劇場クローズ、ひいては舞台芸術が止まってしまった時間を、身をもって経験したからかもしれない。多くの人にとって「食べること=生きること」であるように、「舞台芸術を営むこと=生きること」である人もいる。また誰かにとっては、より良く生きるための大切なエッセンスとして、舞台芸術が存在しているのだと思う。だからこそ、決して「役に立たないもの」ではないと信じている。それでもどうしたって舞台芸術は平和で安全な日常の中でこそ親しまれるものである、という側面も否定できない。
県劇会館40周年に掲げられたスローガン「日常に、劇場を。」このシンプルな言葉に、私は強く惹かれている。県劇の設計者である前川國男氏の言葉を借りれば「100年持つ建築」であるこの劇場。これからも人々の心を豊かにする舞台芸術を生み出す場所として、ごくあたりまえに存在し続けてほしい。県劇100周年まで、どんな日常が待っているか分からないが、その時間をそっと支え、守り育てていける劇場人のひとりになれたら…と思う。

舞台技術グループ
西坂 綾[にしざか あや]




