2020.06.20
県劇スタッフリレーコラム №6
歩みを止めないこと~「人類の行進」マナブ・間部作~
県劇のモール内に掛けてあるひと際大きな絵を見たことがありますか?この絵は、熊本県出身の画家マナブ・間部さんが1980年に描いた「人類の行進」です。私はこの絵から楽器を演奏する人とその演奏を聴く人を想像し、音楽の強いエネルギーを感じました。これまで判断に迷うことがある度にこの絵の前に佇み、励まされてきました。
県劇はこのコロナ感染症の影響で4月22日から5月6日まで臨時休館、そして予定していた多くの文化事業が中止または延期になりました。今、劇場には何が求められているのか、答えのない問いの前に、私は頭を悩ませています。
この状況で、アーティストやスタッフの友人たちも多くの仕事がキャンセルになりました。劇場も開けることが出来ず、友人の力になれない私の立場の弱さと不甲斐なさを悔しく思っています。
以前、演劇史を学んだ時に、ある地点から別の地点に行進することが、それだけで「何かを表現することになる」と学びました。例えば、散歩がてらに買い物に行き、その帰りに公園で本を読むことを日課にしている老人がいるとします。一見何気ない日常かもしれませんが、それだけでも生きているという一つの表現になるのだと思います。
「人類の行進」にはマナブ・間部さんが制作中に考えられていたことがメッセージとして添えられています。
〝我らはより良く生きるために文化を目指して行進する〟(全文より一部抜粋)
いま再びこの絵とメッセージに励まされます。これまで様々な困難を前にして、それでもなお文化を生み、育て、受け継いできた人類の歩みを思います。希望ある明日を目指し、昨日よりも一歩でも歩みを進められるように、歩み続けたいと思います。
(「人類の行進」横6.0m×縦2.0m 株式会社ニュースカイホテル所蔵)
舞台技術グループ 貴田 雄介[きだ ゆうすけ]