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2024.06.20

特集 全国共同制作オペラ「ラ・ボエーム」制作記者会見レポート

最愛にして最後

全国共同制作オペラ「ラ・ボエーム」制作記者会見レポート

2024411日木曜日。
全国共同制作オペラプッチーニ 歌劇「ラ・ボエーム」の制作記者会見を、千穐楽の地となるミューザ川崎シンフォニーホールで実施しました。
2024年末で指揮活動引退を表明している井上道義が最愛”にして“最後”のオペラ制作に際し語ったこと。
2019年の全国共同制作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」でオペラ初演出を成功させ、井上と再びオペラでタッグを組む森山開次の演出プラン。
そして登壇した歌手4人の意気込みを紹介します。

井上  感無量という言葉を使いたい。人間はやっぱり年を取るとダメになる。心温かい人たちはそれを枯れた芸術だとか言うけれど、僕はそういうのを14歳のころから疑っていて。やっぱり音楽っていうのは青春の息吹きで、言葉を変えて言えば、生きている喜びの発露。(「ラ・ボエーム」 を選んだのは)青春に戻りたいという憧れです。自分の今持ってないものへの。
僕は音楽家になりたいと思って指揮者になったわけじゃなくて、舞台で一生を終えたいと思った。世の中は虚偽に満ちているから、だったら思いっきり嘘ついて死んでやろうと。思いっきり素晴らしい嘘を舞台で作れたらいいなと思ったんです。
今年でやめるのが嬉しくてしょうがない。人間は自分でやめるのを決めていいはずだし、皆さんも自分はどうやってやめようかということはきっと考えていると思うから、それのいい例にしたいなと思っている。
この全国共同制作オペラプロジェクトもここまで広がってきて、これからもどんどん広がるでしょう。次の人がきっと継いでくれると思う。

森山 このお話をいただいたのは2年ぐらい前になります。そしてちょうど1年前の昨年4月11日、オーディションで歌手の皆さんと出会った。これから作品を創作していく時間にいよいよ入っていきます。7都市7劇場と、各地の合唱、オーケストラ、スタッフの皆さん。この「ラ・ボエーム」にどれほどの人が関わるか。それを私が先導しながら、井上さんと新しい創作の旅に出られることを本当に嬉しく思っています。
演出のことを少しだけ。まず僕は舞踊なのでこの作品でどういう身体表現ができるだろうかということ考えています。 ただ、無理にダンスを入れたりする必要はなく、歌手の皆さんのたたずまいや仕草というところにも身体表現がある思っています。みんなの歌とともに、躍動する身体を届けられるよう演出に努めたい。また、ダンサーも4人入ってきます。ダンサーたちも、屋根部屋で生活する芸術家の一員よう思っていただけたら。
そしてもう画家マルチェッロに、フランスに渡った画家藤田嗣治の視点を掛け合わせることを考えています。夢と憧れを抱きパリ渡っ日本人アーティス視点を加えることで、お客様にもまたちょっと違う視点が生まれると思っています


髙橋 
井上さんと森山さんとの共演は、2019年の全国共同制作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」以来。おふたりとの現場はビリビリとくるぐらい緊張感があるものでした。またそういう日々がくると思うと、身が引き締まる思いです。
ミミは大好きな役。作中、詩人ロドルフォがミミを「彼女は僕の詩なんだ」と紹介します。彼にとって自分がいかに大切な存在なのかわかり、そのときミミは生き甲斐を見つけたんだと思います。自分の存在意義を確かめるかのように生きていくミミを、森山さんとどのようにつくっていくのか、とても楽しみです。

工藤 井上さんとは、ご自身のオペラ 「A Way from Surrender ~降福からの道~」でタロー役として出演させていただいたのが出会い。若手の音楽家のことを考えてくださっていて、愛情のようなものをすごく感じました。 マエストロにとって今回は人生をかけた最後のオペラだと思うので、僕もやっぱり人生をかけて、今後の人生の宝物になるような作品にしていけたらと思っています。
森山さんの演出は初めてです。オペラは視覚も強い要素だと思うので、自分の持っている音楽を身体表現でどう伝えていくか、今回すごく大きな鍵になると思っています。

中川 歌を始めたばかりのころ、井上さんが指揮した全国共同制作オペラ「フィガロの結婚」の地方合唱団に参加しました。それから井上さんとの共演のたびに一歩ずつ階段を上り、今回はムゼッタ役で参加させていただきます。
ムゼッタは最後まで生きて、ミミの一番の友だちとしてその死を見届けます。その死の悲しさを表現 するのは生きている人だと思いますので、どのように表現するのか模索しながら、皆さんと一緒に作り上げていきたいと思っています。

池内 全国共同制作オペラに参加するのも、井上さんと森山さんとご一緒するのも今回が初めてです。マルチェッロはレパートリーとしてとても大事にしている役。藤田嗣治の視点を掛け合わせることについて、はじめは戸惑いましたが、森山さんからコンセプトを説明いただいて今は本当に楽しみです。今日は僕なりに藤田をイメージした衣裳で臨みました。マルチェッロ/藤田役への熱意を感じ取っていただけたら。
今回さまざまな化学反応が起こると思っています。ボエームを知っている方は度肝を抜かれるでしょうし、初めての方も楽しんでいただけるものになると信じています。

会場には初公開の舞台美術や芸術家たちの衣裳案も                              メインビジュアルほか、模型や衣裳画は森山開次によるもの

撮影:Hidaki Tomoko

 

 

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