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2024.03.20

特集 劇場の未来を話そう

いつでもだれにでも
劇場は、開かれている

あなたにとって、劇場ってどんな場所ですか?

そんな問いを向けられたら、どう答えますか。ある人にとっては、好きな音楽を心ゆくまで堪能できる、日常からちょっと離れた特別な空間かもしれません。部活動の発表会のステージとして思い出の場所と答える人もいるでしょう。もしかしたら、公演を鑑賞する目的以外では足を踏み入れづらい場所と思っている人もいるかもしれません。劇場がどんな場所か、考えたことがない人だっていてもおかしくはありません。
熊本県立劇場の運営を担うわたしたちは、いつうもこの問いに向き合っています。どうすれば、もっと多くの人に来てもらえる劇場になれるのか。劇場の重たい扉を、もっと軽やかに開けてもらえるようにできるだろうか。これからちょっと先の未来に、どんな劇場の姿を描いていくのか。劇場の基本的な運営方針を立て、そのミッションに向かって、毎年さまざまな事業や取り組みを計画し、進めています。2022年に40周年を迎えた劇場の、これから先をどうしていくのか。劇場の未来を担う職員によるディスカッションをもとに、運営計画をご紹介します。

広場としての劇場

公演以外で来館する“きっかけ”づくり
新たな目的で集える劇場へ

これまでも、県立劇場は「誰もが気軽に文化芸術に触れ合え、人と人をつなぐ共生の広場」として、さまざまな事業に取り組んできました。その中で、8月に開催した「県劇盆踊り」は、今後も注力する取り組みとなりました。2016年の熊本地震からの復興の第一歩として姜尚中館長の発案ではじまったこの事業は、コロナ禍で開催できなかった年もあったものの、県劇の夏の風物詩として、ご近所さんをはじめ、実に多くのお客様が集まる行事として定着しつつあります。この事業は、企画から運営まで、県立劇場の事業、施設サービス、舞台技術、総務の4つのグループが一丸となって取り組んできたものです。このグループの垣根を越えた横のつながりによって実現できたといっても過言ではありません。これからも、グループを横断した事業を中心に据えていきます。

山﨑(事業)公演の鑑賞以外で気軽に劇場を利用してもらうための取り組みとして、「光庭文庫」という読書スペースをオープンします。劇場40年の歴史の中で収集した本から厳選して、演劇や音楽など、舞台芸術に関する本を中心にご紹介するスペースです。いつも置いておく定番の本とともに、公演に合わせた特別選書コーナーを設ける予定です。もちろん、ゆっくりとその場で読んでもらえるように施設サービスグループといっしょにレイアウトなど工夫して展開します。

事業グループ 山﨑 拓哉

池島(施設サービス)演劇、コンサート各ホールの部分利用やホワイエでの公演も増えてきたので、ホール以外でも劇場をすみずみまで利用できるような環境を整えていきます。新しく設置する「光庭文庫」とともに、エントランス、モールに作品を飾ることができる展示利用に力を入れていきます。公演開催時は多くの方が利用される劇場を、作品の発表の場として利用してもらいたいと考えています。

施設サービスグループ 池島 茂伸

金子(舞台技術)夏の「県劇盆踊り」は、企画を実際に形にするまで、劇場のすべてのグループが知恵を出し合って、それぞれの役割を果たしてできる事業です。お客様にもこの参加型のイベントに加わって、その良さを味わってほしいと思います。

舞台技術グループ 金子 千佳子

宮本(総務)誰もが気軽に文化芸術を楽しむためには、「安心」が大事だと思います。利用しやすい施設の整備はもちろん、Webサイトでは「やさしい日本語」を使った案内や多言語化にも対応していきます。どなたでも気軽に来館していただくためには、行く前の不安をどれだけ減らしていけるかが課題です。目標としては、行き慣れた劇場になることです。

総務グループ 宮本 帆士魁(ほしと)


育てる劇場

観る人、実演する人、その活動を支える人
3者を育てる場としての役割

劇場という場所は、音楽や演劇などの鑑賞環境が整えられた最高の舞台です。その素晴らしい環境のなか、文化芸術を楽しむことができます。
劇場が持っている環境を活かすには、人材育成が重要です。県立劇場では、音楽、演劇などを観る人、実演する人、そしてのその舞台活動を支える技術者・制作者の3者を育成する人材育成事業に力を入れています。これから先、未来の文化芸術を担う観る人、実演する人、そして活動を支える人の文化芸術に関わる人たち、特に若い世代の人たちを育てていくことを劇場のミッションとして、今後さらに注力していきます。

山﨑(事業)子どもたちに文化芸術の魅力を、まず知ってもらうことを目的に、演劇仕立てのバックステージツアー「劇場探検隊」やダンスワークショップなどを定期的に開催する「けんげきキッズプログラム」をスタートします。舞台芸術への関心喚起のために鑑賞機会を提供するなど、取り組んでいく予定です。また、2004年から継続している演奏家派遣アウトリーチ事業では、2024年から若手の演奏家3名を新規登録アーティストとして迎えます。

池島(施設サービス)舞台技術グループとともに取り組んできた、学生に向けた「バックステージツアー」は引き続き劇場に関心をもってもらうための事業として続けていきます。また、アーティストとともに動画の配信などで、熊本の文化芸術との接点を広げる活動を継続的に。広場として活用する作品展示も、継続性があるものに取り組み、広い意味での文化芸術の人材育成につなげていきたいです

金子(舞台技術)舞台技術者の人材不足は、熊本だけに限らず、全国でも深刻な問題です。しかも熊本には舞台技術の専門の学校がありません。教育の場としての劇場の役割は大きいと思います。施設サービスグループと取り組む「バックステージツアー」をはじめ、毎年開催している「舞台技術の基礎講座」、県内公立文化施設を対象とした研修会などを実施しています。まっさらな舞台からのものづくりを体験できる機会をつくっていきたいと考えています。

宮本(総務)劇場の仕事、運営について知ってもらう機会として、小中高校生、大学生、専門学生など、インターンを受け入れています。インターンシップの期間はさまざまで、3カ月など長期の受け入れも可能です。また、熊本県公立文化施設協議会の会長館として、県内全域の舞台芸術公演の質の向上を図る研修を積極的に行っています。

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