熊本県立図書館タイアップ企画
本の中にある劇場

熊本県立図書館と県立劇場のタイアップ企画として、2007年度から県立劇場の文化事業に関連する図書を「公演を楽しむブックリスト」としてご紹介しています。作曲家や演奏家のこと、楽器にまつわる話や演劇の原作本。さらにはスポーツ、科学に関する本も！そして、このコーナーでは、県立図書館職員おススメ本もブックリストの本も県立図書館で読むことができますので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

目の見えない白鳥さんと
アートを見にいく

美術館の楽しみ方はいろいろとありますが、私は、作品を遠くからボーっと見たり、キャプションをじっくり読んだりしつつ気の向くままに進みます。見終わったあとに外の空気を思いっきり吸い込む瞬間の「久々に息を吸った～！」という爽快感も好きです。

タイトルに惹かれたこの本は、全盲の美術鑑賞者 白鳥さんと一緒に国内外の美術館を巡った著者の体験が綴られています。晴眼者の生解説で作品を感じるのが白鳥さん流の「見る」なのですが、解説の正確さは求めておらず、むしろめちゃくちゃであるほどいいとのこと。複数人で鑑賞すると、同じ作品を見ても原っぱに見える人と湖に見える人がいて、会話がこんがらがっていく様子が面白いのだそう。

色のとらえ方や見えるようになりたいかなどの友人の純粋な質問に答える自然体の白鳥さんに触れることで、個性としての障がいのとらえ方や自分の中の「見えない人への先入観」に気づくことができ、本を通して人に出会う不思議を改めて感じました。

熊本県立図書館 情報支援課 主事 司書
松本　結［まつもと　ゆい］