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2026.03.20
【館長室から】No.3

春と青春
春は草木萌動からさらに生命が躍動する季節である。人生の若く活力に満ちた時期を「青春」と呼ぶのも生命の躍動に由来しているのだろう。入学や卒業、就職など、数々の「青春の門」が用意されているのも春だ。
ただ、青春には失意や蹉跌(さてつ)が伴うことがあり、ただ青春を、春を屈託なく謳歌(おうか)する気になれないのも私の正直な感慨だ。母が口癖のように、春は死と再生の季節だと独りごちていたことが思い出される。その母も春に逝き、さらに東日本大震災も熊本地震も春に多くの犠牲者を出した。萌え出づる春、そして躍動する春は、何と残酷なことか。しかしそれでも、大空の青さのごとく、小鳥のごとく、花のごとく無関心でありながら、それでいて希望の光を注いでくれる春に心動かされるのはどうしてか。それは、青春と同じだからに違いない。希望にせよ、歓喜にせよ、あるいは失意にせよ、挫折にせよ、誰でもが一度はその洗礼を受けることになる青春を愛でるように、春を愛でたい。





