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2025.12.20

【利用団体公演レポート】ラスカーラ・オペラ協会 設立15周年記念演奏会

ラスカーラ・オペラ協会 設立15周年記念演奏会
2025年11月3日(月・祝)熊本県立劇場コンサートホール

中学生から70代まで、協会がつなぐ熊本の芸術家たち。マストランジェロ氏の指揮は、実に10年ぶり

 

嵐の海、激しい風、人々の嘆き。「ラスカーラ・オペラ協会」の設立15周年記念演奏会の一曲目にセレクトされたのは、同協会の設立のきっかけとなったマエストロ、ステファーノ・マストランジェロ氏の指揮で2010年に上演したオペラ『オテッロ』の中から第一幕冒頭「嵐の合唱」でした。「目をつむってみるとその物語を知らない人でも情景が広がる。頭で理解することを超えた感情に届くのがオペラの力です」とのマストランジェロ氏の言葉通り、冒頭からホールに臨場感あふれる空気が広がりました。今回の演奏会はマエストロが選曲したオペラの一部分のダイジェストを集めた全17曲。CMやTV番組など、何らかの形で耳にしたことがある旋律も含め、ダイレクトに感情に届くようなセレクトが印象的な組み立てでした。当日は客演当日は客演ソリストを含め、中学生から70代までの幅広いメンバーで構成され、一曲ごとに代表である岩本貴文さん(一般社団法人ラスカーラ・オペラ振興会 理事長)の解説が入り、終始和気あいあいとした雰囲気で進められました。今回のラスカーラ・オペラ協会15周年の記念演奏会で、マストランジェロ氏が指揮をするのは実に10年ぶりのこと。その演奏会に際して、指揮者マストランジェロ氏と岩本さんからお話を聞きました。

ステファーノ・マストランジェロ氏とラスカーラ・オペラ協会代表の岩本貴文(一般社団法人ラスカーラ・オペラ振興会理事長)さん。2人が敬愛する指揮者シノーポリ氏が結びつけた「ラスカーラ・オペラ協会」の活動は、地域で活動する素晴らしい芸術家の存在を、熊本の地から発信しつづけています。

 

♦地方から文化を発信する。オペラはイベントではなく精神性を伝える時間
2007年の岩本さんが出演したオペラの舞台を、観客席で観ていたマストランジェロ氏。ラスカーラ・オペラ協会は、指揮者のステファーノ・マストランジェロ氏と代表の岩本貴文さんとの、まさに運命ともいえる出会いからはじまりました。終演後に語り合う機会を得た岩本さんは、その頃からずっと胸に抱いていた「熊本でオペラを広めたい」という熱い思いをぶつけたことが、二人を深く結びつけ、熊本での活動につながったのです。マストランジェロ氏の師匠であり、岩本さんも敬愛する指揮者ジュゼッペ・シノーポリ氏の「人は自分の生まれた地に戻り、そこに文化を根付かせるべきた」との言葉に共鳴するように、熊本での活動を約束。そして、2010年に県立劇場でのはじめてのオペラ公演が実現しました。
オペラはひとつのイベントではなく、精神性を文化として伝えるための時間。「作者が苦悩の末に書き上げた言葉に、作曲家が旋律を与え、そして演じる人たちが肉体を使って命を吹き込みます。その三位一体の表現こそが、その表現を観る人たちに理解を超えた感情として届くもの。言葉がわからなくても、感じることができる、その情景をまざまざとイメージできる、それがオペラの力です」と、マストランジェロ氏は語ります。

♦劇場は情熱を生み出す工場のようなもの。つねに火を灯し、動き続ける
ラスカーラ・オペラ協会としての活動は、ベースとなる公演をはじめ、親と子のオペラ鑑賞会『ヘンゼルとグレーテル』など子どもの情操教育につながる活動にも注力しています。地方から文化を発信するためには、多くの人に劇場まで足を運んでもらうことが大前提で、そこで質の高い公演を提供しつづけることをめざしています。「ヨーロッパでも、ゲネプロ(本番同様の通し稽古)を子どもたちに観劇してもらうプログラムが設けられるなど、文化の発信を地方から取り組む動きが盛んです。劇場はまさに情熱をつくりだしていく工場。人々の心を動かすためには、つねに火を灯し、動き続けることが大事なのです」とマストランジェロ氏が、15周年という記念すべき日を迎えたラスカーラ・オペラ協会へエールを送ります。地方に素晴らしい芸術家が数多くいることを伝えれば、名のあるスタープレイヤーを呼ばなくても劇場に人を呼ぶことができる。一人ひとりが輝くことで、情熱の循環を生み出し、地方から文化を発信することができる。つねに火を灯しつづけ、これから次の15年への第一歩を力強く踏み出したラスカーラ・オペラ協会の記念演奏会。その火が力強く燃えていることを垣間見ることができました。

「ラスカーラ・オペラ協会」はオペラ専門の合唱団と管弦楽団が統合し、2011年に設立。「地元である熊本でオペラの文化を広めたい」との代表の岩本貴文さんの情熱に応え、その設立時に5年間の期限で芸術監督になったのがマストランジェロ氏でした。15周年を迎え、今後も熊本の地から情熱を生み出し、常に火を灯しつづけて、質の高い公演を届けていく決意を新たにしました。

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