2020.09.20
自主事業ハイライト「ケンゲキオンラインスクール~音楽を聴こう知ろう~」
ホールと教室をつなぐ特別な演奏会
新型コロナウイルス感染症の影響で、学校の音楽の授業内容に多くの制限がかかっています。感染予防の観点から授業で歌うこと、演奏することが自粛されている今だからこそ、熊本県立劇場ができることがないか。そこから企画されたのが「ケンゲキ オンラインスクール」。県劇のコンサートホールと学校の教室をオンラインで結び、子どもたちにプロの演奏家によるリアルタイムの演奏を届ける取り組みです。
企画の監修・教材作成に、熊本大学大学院の瀧川研究室の協力をいただき、小学校の低・中・高学年それぞれの学年の教科書に載っている曲目を選定。演奏の前後に解説を交えた構成で30分間のプログラムを作成しました。夏休み直前の7月下旬の3日間、合計7回の演奏会を設定し、熊本市内の小学校に参加を募りました。直前の募集にも関わらず、予想をはるかに超えるたくさんの参加申し込みがありました。初日の第1回目の小学校低学年向けの演奏会には、合計で76クラス、2000人以上の児童が参加。これは、コンサートホールを満席にし、さらに立ち見が出て、ホワイエまでお客さんがあふれるくらいの人数です。
コンサートホールでの演奏をリモートで、しかも大勢の人に届ける取り組みは、県劇でもはじめてのこと。いかにライブ演奏を良い音で、ホールに響く音の感動をそのまま届けられるか。実施日まで何度もリハーサルを重ね、試行錯誤しました。最終的にはZoomで教室とつなぎ、YouTubeLiveでホールでの演奏を届ける方法を採用。慣れない中でお届けしたリモート演奏会でしたが、知っている曲を聴いて体を動かしたり、拍手したり、音楽を心から楽しんでいる子どもたちの姿が画面越しに多く見られました。「コンサートホールで、観客は画面の中の子どもたち。経験したことのない状況でしたが、豊かな響きのホールで生の演奏を届けられてよかった」と、第1回目の演奏を担当したピアノデュオの谷脇裕子さんと柴田遥子さんのコメントにあるように、演奏活動の自粛を余儀なくされているアーティストにとっても貴重な演奏体験になったようです。
企画監修・教材作成
熊本大学大学院准教授 瀧川 淳
今回の演奏会は、オンラインで〝リアルタイム〟の演奏を届けることに意義があります。録音・録画ではなく、演奏者の音を感じ、ライブで共有する時間を提供したいと考えました。県劇の格調高いコンサートホールで実施できたことで、豊かな響きまで感じられる贅沢な時間になったと思います。また、演奏活動が激減しているアーティストに演奏を依頼することで、支援にもつながります。今後はホームページ上で演奏会の映像や学習ワークシート公開など、新たな形の音楽鑑賞として展開していく予定です。
(コンサートホールの舞台で演奏が行われた。客席にいたのはスタッフのみだが、教室では多くの子どもたちが鑑賞した。)