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2024.12.20

【県劇職員が本音を綴るリレーコラム】No.23

野焼きの季節

阿蘇の野焼きボランティアになって5回目の冬を迎えた。以前、川内倫子さんの写真展で米塚の野焼きの写真を見て、「自分の目で見てみたい」と思ったことを覚えている。慌ただしい日々の中でそんな気持ちもすっかり忘れていたが、それから何年も経って親友夫婦の誘いでボランティアになった。
ボランティアたちは難燃性の服を着用し、消火用に最低2Lの水を背負い、防護ゴーグルや緊急用のホイッスルを身に着けて牧野の人と一緒に草原に入る。初めて野焼きに参加した日は靄がかかって視界が悪く、しばらく現地で待機をした後、天候が回復せずにそのまま解散になった。氷点下に迫る気温の中で晴れを待ちながら火を入れるはずだった草原を眺めているとき、白い靄が何層にも重なって、その向こうに時々山肌が見えるだけなのに、きれいだなと思った自分がいた。その時、晴れだけが良い天気ではないということに初めて気が付いた。
実をいうと私は冬が苦手だった。でも、野焼きに参加してからはそこで見る景色や季節ごとに移り変わる草原の様子を通して、冬の冷たい空気も少し重たい雲も全て楽しめるようになった。今年もまた冬が来る。春を待つ準備ができる。この冬はどこに行けるのか楽しみだ。

事業グループ
井田 智子〔いだ ともこ〕

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