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2023.06.15

寄稿「開館40周年記念事業『動く劇場』(万田坑×DANCE)主演・振付・脚本」

万田坑を訪れて感じたことは、人が人を思い合う日常があったということだ。危険と隣り合わせの炭鉱仕事の無事を祈る石碑、職場の「ご苦労さん」の看板。世界遺産という圧倒的なロケーションで踊るだけでなく、万田坑で人々が生活していた時代に思いを馳せダンスを考えたいと思った。
作品では、焚き火をしていて偶然見つかったとも言われる石炭が日本の近代化に貢献したように、偶然や奇跡から始まり様々な出逢いによって発展する人の一生のようなイメージで物語を構成した。
女神と言われる山ノ神は、神々しくも包み込むような優しさと祈りが源となった力強さを。荒尾・玉名地域の小中学生ダンサーが踊る石炭の精霊たちの指先には、石炭が燃え上がるように熱く盛り上がる未来への希望や彼らの夢への情熱が込められている。炭鉱をイメージした音で構成される曲に、万田坑で生きてきた人々、今回の作品に携わってくれた人々の思いをのせ、カナリアが不死鳥となって舞い降りるようなイメージでラストシーンを踊った。
Dance is Timeless という言葉のように、時空を超えてたくさんの人の思いや日常がつながってこの作品は完成した。時代や仕事が違えど誰かを思い懸命に生きることの尊さを世界遺産万田坑から教わった。この作品が多くの人に届いて、それぞれの日常を誇りに思ってもらえたら嬉しい。そして日常をより豊かにする感動体験を次は劇場で味わってほしいと思う。

ダンサー・振付師
葉山 悠介

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