2022.09.15
まなびの風景「熊本県立宇土高等学校和太鼓部『鼓(つづみ)』」
自主自立、
そして自由に
個性を活かす
宇土市には雨乞い祈願や農耕儀礼として雨乞い大太鼓が伝承されており、2017年には国指定重要有形民俗文化財に指定されています。太鼓文化が根強く残る地域の高校として、和太鼓部が発足したのは2000年のこと。高校創立80周年の式典の際に、雨乞い太鼓保存会から有志が技術を習い、大太鼓を披露したことがきっかけとなりました。部活動としての第一号の部員となったのが、現在部活動の外部コーチである高田大介さんです。宇土高校和太鼓部が大切に継承しているのが「自主自立」の精神。高校の部活といえば、とにかく結果を出すことが目的となることが多い中、一緒に何かをつくりあげ、ともに成功体験を積むことに重きを置いているといいます。その集大成となるのが、毎年6月に開催される3年生の引退記念演奏会です。宇土市民会館で開催される2時間の公演を、部員全員で企画・運営まで行うもの。舞台の構成は、自主自立にまかせ、そして自由に個性を活かしたもので、毎年盛り上がるといいます。
宇土の
太鼓文化を全国に
そして未来へ
宇土の雨乞い大太鼓は、江戸時代から明治にかけて各地域でつくられ、保存修復を経た26基が宇土市大太鼓収蔵館に保存されています。部活動の一環で、この収蔵館にある大太鼓の貼り替えを生徒たちに見学してもらうといいます。太鼓を通した地域文化への興味関心、そして人間的な成長に重きを置いた指導者の考えが垣間見えます。「宇土といえば、大太鼓」。そう認識してもらえるよう、高校生の部活動が寄与する面も大きく、地域からの期待も大きいといいます。今年6月の引退記念演奏会で、部長に選出された2年生の松井春奈さんは、「この部活動には〝ありがとう〟がたくさんあります。地域から愛される部活動だからこそ、今自分たちができることを全力でやっていきたい」と語ってくれました。その年の部員の〝個性〟に合わせたオリジナルの演奏を、その次の年の引退記念演奏会で披露することが、宇土高校の太鼓部の伝統。松井さん率いる部活動の現メンバーの、来年の公演が楽しみでもあります。