2022.06.15
寄稿「開館40周年記念コンセプトムービー 監督・撮影・編集」
熊本で生まれ育った私にとって、熊本県立劇場の開館40周年記念ムービーを制作することは夢のような話だった。
最初に県劇スタッフの皆様にご挨拶をし、中を案内していただいた時のことを鮮明に覚えている。洗練された建築、歴史を感じる香り、そして、働く人々が自然と奏でる環境音。何度も訪れたことのある県劇の一つひとつに感動を覚える中、その様子をスタッフの皆さんが心から喜んでくれ、目を輝かせて数々の魅力を語ってくれた。僕ら以外には誰もいない空間だったが、僕には演者や観客、緊張や涙、輝きや拍手が確かに見えた。プロに酔いしれ、目を輝かせる人。手に汗を握り見守る人。ステージから溢れ出る夢を感じ、受け取り、また新たな夢を描く人々、、文化芸術によって生まれる「人生を変えるほどの瞬間」のそばには、表現者と観客、それをサポートする方々の存在がある。
今回の作品では「県劇=人」を自分の中での大切なテーマに掲げ、県劇スタッフの皆さん、統括してくれた原田さん、全ての音楽を担当してくれた鎌田さん、建築の観点からもサポートしてくれたフォトグラファーの橋本くんをはじめとする心強いチームが一丸となり作り上げた。2分27秒という短い時間の中で、歴史・人・感謝が伝わる作品になっていれば嬉しい。
僕らは、撮影中に見せてくれた舞台に向かう後ろ姿、40年間県劇で勤め上げた本田さんの最後の一礼、作品を演劇ホールで上映した時の県劇の皆さんの表情を一生忘れることはないだろう。新たな一歩を踏み出した県劇が、次はどんな輝きを見せてくれるのか、心から楽しみでならない。
中川 典彌
株式会社 映 gentRo・man 代表取締役